--+--- Invincible Lady ---+--



BY ニイラケイ






     
 
現在、渋谷にある事務所にて開かれている飲み会は、何名かの脱落者を出しつつも、
豪快に飲み続ける数名の男女によって、いまだ宴がお開きになる様子はない。


事務所の所長こと、渋谷氏は非常に不愉快にもこの飲み会に参加している。
とは言っても、ただ同じ卓についているだけで、彼の興味はもっぱら活字の方にいっている。
何度か勧められたアルコールも、全て胃に収めているはずなのに、
ナルは、全くの無表情のままだ。
彼をこの飲み会に引っ張ってきた張本人は、既に心地よい眠りの中に落ちている。

「麻衣ってば、もう寝ちゃったの?だらしないわねぇ」
綾子が、幸せそうに眠る麻衣の顔を覗き込む。
他の人間は思い思いに騒いでいて、どうやら麻衣が沈没したことに気が付いていないようだ。
綾子がザルだという噂は聞いていたが、初めて自分の目で確認したナルは、密かにため息をついた。
「一体、いつまで飲んでいるおつもりですか?」
いいかげん帰りたいんですが。
ナルの発言に対する、綾子の反応は意外とあっさりしていた。
「いいわよ、帰りたきゃ帰れば?…ただし、麻衣の睡眠を妨げないでよね」
「…それはつまり、帰るな、ということですか?」
「あら、別にあたしは引き留めたりしてないわよ?」
いくらナルでも、理屈で酔っぱらいには勝てないのである。

ナルの膝の上には、麻衣が座り込んで眠っている。
つまり、彼は麻衣を抱えたまま読書をしていたわけだ。
なかなか難しいが、出来ないことではなかった。

泥酔している麻衣が、多少のことで目を覚ますはずもないだろうが、
麻衣を起こしたと言って、綾子が騒ぎ立てでもしたら
滝川や他のメンバーたちまで加わってきて鬱陶しいことになる。

「いつまで馬鹿騒ぎに付き合えと?」
「そうねぇ、とりあえずお酌とかしてくれたら考えても良いんだけど?」
「冗談は苦手なので」
「あっそ。いいじゃないの、たまには飲み会に付き合うぐらい」
「ぐらい?…明らかに時間を無駄にしているように見えるんですが」
「無駄じゃないわよ」
「根拠は?」
「だって、楽しいでしょ。みんなで飲むのって」
「誰が?」
「あたしが」
「…松崎さんのために、僕が時間を費やさなくてはならない理由をお聞かせ願えますか?」
「麻衣が「最近、みんなであんまり集まれないね」って、言ったから」
「は?」
「麻衣の為よ。それが理由」
綾子は、持っていたグラスを傾けて、残っていた日本酒を喉に流し込んだ。
「あたしの為じゃなくて、麻衣の為よ。…納得した?」
ナルは答えない。
が、それ以上の反論が出てこないことは、綾子には解っていた。

常に冷静でプライドが高く、人前で自分を見失うことなど殆どないナル。
彼の最大の泣き所である麻衣は、ナルの複雑(であろう)心境などつゆ知らず、
すやすやと穏やかな寝息をたてている。
「…ナルにとっての麻衣って、何?」
綾子の突然の問いかけに、ナルが怪訝な顔をする。
「おっしゃっていることの意味が、よく解りませんが」
「ナルってさ、いつから麻衣のこと好きなの?」
「…答える必要を感じませんね」
「へ〜、じゃあ麻衣を好きなことは認めるのね?」
更に眉を顰めてナルが一言。
「揚げ足取りですか?」
「そうよ。滅多に尻尾出さないんだから、たまには良いでしょ?」
にっと笑って、綾子が立ち上がる。
そのまま何事もなかったように、未だに騒いでいる滝川たちの輪の中へ入っていった。

お決まりのため息をついたあと、ナルは膝の上にいる麻衣を見た。
「いつまで狸でいるつもりだ?」
「あ、やっぱばれてた?」
「当たり前だ、馬鹿」
「でも、途中まではちゃんと寝てたんだよ」
「解ったから、さっさと降りろ。重い」
「あら。良いでしょ?たまには」
綾子の口調を真似て、麻衣がナルに笑いかける。

ナルはもう一度、呆れたようにため息をついて、麻衣の頭を撫でた。
「…たまには、な」
 
     






ねーさんが書きたかっただけですナリ。
綾子はこんなんじゃない!というご意見もあるかと思いますが。(今更ですか・・・?)
綾子の誕生日記念でアップするつもりで書いたのに、
何故か目立っているナルと麻衣。
・・・とことんナルX麻衣なのか?オレ。(うん)
っつーか、タイトルの英語、本当に合ってるのか・・・?(不安)