宣戦布告

 秋も真っ盛りの、とある晴天の日。
 あたしは十九歳の誕生日を迎えた。
「……朝か……」
 昨晩泊まったこの町は、海産物がおいしいと噂の、南方の都市。沿岸諸国連合に連なる小国にあって、この季節でもなかなか暖かい。
 最近これと言って目的もなく旅をしているあたしたちは、寒くなる季節には南方へ向かうことにしていた。
 そう、あたしは十九歳になっても、まだ変わらず旅をしている。子供だった四年前と変わらずに。
(……まぁ、大人になった部分もあるけど)
 主に胸とか。胸とか。
 なんと、四年前に比べて指一本分ほども大きくなっているのである!
 ……普通の人に比べたら小さいまんまとゆー説もあるかもしんない。
 それはともかく。
 十九歳にもなって、やることはあまり変わらず。
 旅の連れであるガウリイとの関係も、特に変わりなく。
 それはもう、千年一日とはこのことかってくらいに出会った頃のままの関係を続けていた。
 もういい加減どうにかなってもいいのではないだろうかと、常々不満に思っている。
 というわけで、節目のこの日、あたしはとある決意をしていた。
 手早く髪をとかして、いつもの服を着て。
 鏡の前で一通り全身をチェックする。
「……うし」
 今日もなかなかの美少女……いや、美女である。
 やれるはずだ。
 いや、やれるはずなどというのは弱気すぎる。やるのだ。
 昔のよーに大暴れすることも少なくなってきたが、あたしは泣く子も黙ると言われたリナ=インバースである。この程度のことで怖じ気付く道理はないっ!
 鏡に向かって一つうなずいたあたしは、決然たる足取りで部屋を出た。

 向かうのはおとなり、旅の連れである脳みその発酵した男が泊まっている部屋だ。
 この時間なら、まだ身支度を整えているだろう。
「リナ?」
 ノックをしてやると、すぐにガウリイの声が聞こえた。
 歩き方かノックの仕方か、その両方であたしだとわかったらしい。
「入ってもいい?」
「おー。ちょっと待て、今開けるから」
 着替え中だったのか、少しごそごそと音がした後、すぐに扉が開けられた。
「おはよ、ガウリイ」
「おはよう」
 顔を出したガウリイも、出会った頃からあまり変わりがない。
 いや、少し老けただろうか。
 あたしは未だにこいつの年を知らないが、話を総合すると六つか七つ上らしい。となると、そろそろ二十六くらい。現代においては、子供の二人や三人持っていそうないい年である。
 十五の頃に比べると年齢差は感じなくなったが、それでもだいぶ年上だなぁという感はある。そんなこと、今日は気にしないけれども。
「ちょっと話があるんだけど、いいかしら」
 緊張で大騒ぎする胸を押し殺して、努めて冷静な声を出す。
「かまわんが……どうした?」
 扉を大きく開いてあたしを迎え入れてくれるガウリイは、少し不審そうな顔をした。
 あたしが緊張していることに気付いているのだろうか。
 あたしは中に入り、内側から錠を下ろす。
「座るか?」
「ううん、ここでいい」
 ガウリイは一人でどっかりとベッドに腰を下ろす。
 あたしはその前に立って、でっかい男をじっと見た。
 この状態で、やっと少しだけあたしの方が高くなる。でっかいことには変わりないけれども、見下ろす状態になると圧迫感が少し薄れる気がする。
 これでいい。
 気弱になったら、負けだ。
 準備は整った。戦闘開始だ。
 もちろん勝負は先手必勝、奇襲あるのみ!
「あたしも十九歳になったんで、はっきりさせておきたいことがあるんだけど」
「へー。十九歳になったのか。いつだ?」
「今日よ。んなことはどーでもいーんだけど。あたし、あんたのことが好きなわけ」
「へー。……へっ!?」
「いーかげん、このうやむやの状況を続けてるのもどーかって気になってきたのよね。だからここで、きっぱりと宣言させてもらうわ」
 あたしは、びしりとガウリイに指を突きつけて不敵に笑ってみせる。
「大好きだから。覚悟してよね」
 言えた。
 うしっ! 完璧っ!
 こっちのダメージもかなり大きかったが、それ以上のダメージを与えることができたはずだ。
 ガウリイは何も言わない。口も利けないほど驚いているらしい。
 作戦は成功と言えよう。
「んじゃっ、そーゆーことで!」
 さくっと決めて去ろうとしたのだが。
「……覚悟って、何のだ……?」
 ぼけっとしたガウリイの呟きに、思わずつんのめって倒れそうになった。
「解説が必要かっ!? それはっ!?」
「……もしかして、告白してるつもりなのか……?」
 この上なく額面通り告白だったと思う。
 黙っていたのは、驚いていたわけではなく理解できなかっただけかっ!?
「あのねぇ。それ以外の何に聞こえるのよ?」
「ケンカ売られたよーに聞こえる……」
 売ったんだけど。ある意味。
「えーえーそうよ。あんたのそういうボケた態度に対して、いー加減にしてくれる、と言ったつもりなんだけどね」
 ガウリイはぽりぽりと頬をかく。
「……ふーん。で?」
「だからっ! あたしがこれから迫るんだから覚悟しなさいって言ってんのよっ!」
 はっきり言わないとわからんのか。
「あんたはあたしがいつまでも子供だと思ってるんでしょーけど、これでももう十九歳になったの。でもってあんたのことが好きなわけ。もちろん、保護者としておとーさん好き、とかそーゆー意味じゃないわよ。もう子供扱いはされてやんないし、はぐらかして逃げるのは許さないから、よく覚えときなさいよねっ!」
 ガウリイはしばらくじっとあたしを見ていた。
 やっと脳に内容が到達したか、と思ったのだが。
「……はぁ」
 と、気の抜けるような相づちを打ってきた。
 ……殴ったろか……。
「……ここまで言っても聞き流そうってわけ……?」
「いや……そんなこと言われてもなぁ。今さらだろ」
「い、今さらっ!?」
「覚悟ならとっくにできてるんだが……お前さんこそ、覚悟はいいのか?」
「なっ……!?」
 なぜそこであたしが問いかけられなきゃいけない!?
 しかもなんか、あきれたよーな顔してるしっ!?
「朝っぱらから人の部屋に押し掛けてきて、何を言うかと思えば……。話はそれだけなのか?」
「いや……そーだけど……」
「じゃ、朝メシ食いにいこーぜ」
 立ち上がったガウリイは、いつもの調子でぽんっとあたしの頭をたたく。
「腹減ってんだろ」
 ど……どーしてそーなる……?
「ちょっとガウリイっ! あんたあたしの言った意味わかってんのっ!?」
「ああ」
「ほ、ほんとにわかってるわけっ!?」
「お前さんよりよっぽどわかってると思うぞ」
 言って、さらにあきれたような目で見下ろしてくる。
「それとも何だ。ここで押し倒すとかどーとかしてほしいのか?」
「お……押し倒……っ!?」
 思わず後ずさりすると、ガウリイは気のないそぶりで肩をすくめる。
「ほらな。覚悟ができてないのはお前さんのほうだろ」
「あ……あたしは覚悟できてるわよっ!」
 あたしは腕を伸ばしてガウリイの襟首をつかむ。
 見慣れた顔が近づいて、鼓動が跳ね上がる。だが、そんなことに頓着してはいられない。
「あんたのほーこそ、んなこと言って、押し倒す度胸なんかないくせに」
「押し倒したら嫌がるだろーが、お前さん」
「やってみたこともないくせに、えらそーなこと言わないでよ」
「やってみなくてもわかるって」
「わかるわけあるかっ!」
「もーやめとけ。遊びじゃすまなくなるぞ」
「これが遊んでるよーに見えるのかぁぁぁっ!」
 こひつは。
 わかった。そこまで言うなら、試してやるしかない。
 あたしはガウリイに足払いをかけ、同時に力いっぱい体当たりした。
「こらっ……!」
 本気で抵抗されたらそれでも動かなかったと思うが、ガウリイはそれほど嫌がらずに倒れてくれた。
 おそらく、あたしにその先をする度胸などないと思っているのだ。
「――子供扱いして逃げるのは許さないって言ったでしょ」
 あたしはガウリイのお腹の上に馬乗りになり、襟をつかんだまま低く言う。
 もちろん、ガウリイがその気になれば軽いあたしの体など簡単にはねのけることができるだろう。気分の問題だ。
「覚悟ができてるって言うんなら、その覚悟。見せてもらおうじゃないの」
 緊張で頭が正常に働かなかった。
 すごいことをやっている自覚はあるのだが、実感がない。
 『で、どーする気だ?』と言わんばかりの目であたしを見るガウリイ。
 あたしが怖じ気付くとでも思っているのか。
 とんでもない。ここまでやって後に引けるわけがない。
 あたしは本気である。今日のこの日を迎えるまでに、何ヶ月もかけて覚悟を決めたのだ。ガウリイがあわてようが逃げようが、知ったこっちゃない。捨て身になって、この男を手に入れてやると決めたのである。
 ――とまぁ、気持ちの上ではそーゆーことなのだが。
 ……どーしたらいいんだ実際……?
 えっと……押し倒したんだから、すけべな気分にさせればいいわけで……しかしどーやって……?
 聞いた話によると、何やらややこしいところをさわったり、さわらせたりするものらしいが。……さすがに乙女としてそこまでは。
 とりあえず……服を脱がせるとか?
 いや、まずキスなぞするべきところか?
 う……ううむ。
 そもそも、男とゆーのは押し倒されたらその気になるものなのではないのだろーか。
 男なんて押し倒してしまえばこっちのもの、などという話をよく耳にするが、それは具体的にこういうことではないのか。それともガウリイが鈍いのか。
 で……どうしよう。
「……えっと」
「――おしまいか?」
 澄んだ青い瞳に見上げられたら、体が痺れたように動かなくなった。
 ……これに怯まないと決めたはずなのだが。
 結局、この先には踏み込めないのだろうか。
 ――いいや、やってやるっ!
 あたしの本気を見てあわてるがいいっ!
「……おしまいなわけないでしょ」
 襟首をつかんだ手にぐっと力を入れて。
 あたしはその唇に自分の唇をぶつけた。
「んっ……」
 堅そうに見えた唇は、意外にやわらかかった。
 だけど、それ以上何も感じなかった。
 ただひたすら胸が苦しくて、頬が燃えるように熱くて、緊張で意識が吹っ飛びそうだった。
 何も考えられない。
 何もできない。
 ただ、唇を押しつけているだけ。
「…………」
 しばらくしてゆっくり唇を離すと、恥ずかしいけど緊張で手が震えていた。
 これほどの緊張を味わった覚えは、しばらくない。
 どーよ。これでもまだ、子供扱いできる……?
「……色気ないなぁ」
 ぽつりと呟かれた言葉の内容に、思わずあたしはエルボークラッシュを……叩き込みかけてすんでのところで自制した。
 迫りにきたのだから、ここで殴ってしまっては台無しだ。
 あたしも大人になったものである。
 ガウリイは声を殺して笑うと、あたしの頬に手を伸ばした。
「……これ、新手の制裁なのか……?」
 まだゆーか、そーゆーことを。
「制裁されてる気分なわけ?」
「あー……まぁ、ちょっとな」
「……ふんっ。子供扱いしてた女に迫られて、そりゃーお困りでしょうとも」
「いや、そういう意味じゃないんだが……」
「そーゆー意味じゃないなら、どーゆー意味よ」
「だから……困ってるわけじゃないって」
「困ってるじゃない、どう見ても」
「いや……その、な」
 苦笑するガウリイを見て、煮えきっていた頭がふっと静まる。
 そーいえば。
 覚悟ならとっくにできるとか何とか。あれって、よく考えればあたしの告白への返事だったのではないだろーか?
 からかうような言い方にかっとなって、根本的なところをすっ飛ばしていたけれども。
 迫られる覚悟はできている。あたしに好きだと言われる覚悟はできている、というのは、要するに。
「――ガウリイ……その……もしかして、あたしのこと……えっと、子供じゃないと思ってる、とか」
 好きなの? とはっきり聞くことができずに、つい言葉を濁してしまった。
 だって、違うって言われたら恥ずかしすぎるし。
 あたしの心労をよそに、ガウリイはあっさりとうなずいた。
「そう見えないか?」
「それは、つまりその……もしかすると、あたしのことが好き、とゆー……」
 告白した時以上の勇気をもってそう口にしたのだが。
 ガウリイはこれにもあっさりとうなずいた。
「そーゆーことだが」
「じゃあなんで今さらとか言うわけっ!?」
 しかもあきれたような顔をして!?
「そこは喜ぶところなんじゃないのっ!? でなきゃ、驚くとか何とか、もっと他の反応があるでしょーがっ!?」
「いや、だから……何で驚かなきゃいけないんだ?」
「何でって、好きな女の子に好きだって言われたら普通驚かないのかっ!?」
「オレとしては、お前さんが驚くと思ってることに驚いたんだが」
「どーしてよ!?」
「だってなぁ、お前さん……」
 ガウリイはまたあきれたような目であたしを見る。
「前から時々、変なことしてきたろ」
「は?」
「突然、黙って腕つかんできたりとか……手握ってきたりとか……」
 いやそれは……。
 あたしだって、こーゆー直接的な手段にでる前に、いろいろ遠回しな誘いをかけてみたわけで……。
 それでも無反応だったじゃないかガウリイっ!
 手を握った時にしても、腕をつかんでじーっと見つめた時にしても、こっちは崖から飛び降りる覚悟だったとゆーのに、一瞬こっちをちらっと見ただけで、まるで当たり前のよーな顔で歩き続けてっ! どーゆーつもりだ一体と思うではないかっ!
「わか……ってたわけ……」
「いや、わかるぞふつう」
 き、厳しいツッコミがっ!
「それじゃ、とっくに知ってるつもりで……」
「だから今さらだって……あーそーゆーことか」
 何か納得したのか、大きくうなずくガウリイくん。
「もしかしてリナ、お前さん……はっきり言葉にしなきゃ変わんないと思ってたのか?」
「へっ?」
「オレ、とっくに変わってるつもりでいたけど……」
「な……何それ……」
 じゃあつまり何か。
 ガウリイの方は、あたしのアプローチをしっかり理解していて。もうすでに受け入れたつもりでいたと。そーゆーことか。
「い……」
「い?」
「言わずにわかるかそんなもんんんんっ!!」
 あたしは絶叫した。
 ガウリイはぽりぽりと頭をかく。
「……お前、オレのことバカだと思ってないか……?」
 いやすごく思ってる。
 じゃなくて。
 この場合、間抜けだったのはあたしの方なのか……?
 間抜けというか、やっぱし子供……?
「あ……あたしの決意は……一体……」
 ガウリイは困ったように笑う。
 どーしよーかと迷ったあげく。
 あたしはのそのそとガウリイの上からどいた。
 これ以上迫っても、突き崩せそうにない。思った以上に手強い、この男。
 ガウリイはどこかほっとしたように息を吐いて、体を起こす。
 そして、足下の方にちょこんと座ったあたしの頭をくしゃりとなでた。
「……覚悟、まだできてないだろ?」
 優しく問われて、思わず言い返した。
「……できてるわよ」
「ほう」
「できてるってば」
「ほんとだな」
「全財産を賭けてもいいわ」
「……んー。じゃあ、怒らないか?」
「何をするかにもよる。……うーん、やっぱ怒らない」
 覚悟というのは、そういうものだろう。
「そっか……」
 ため息をついたガウリイが、あたしの両頬を大きな手で包む。
「――ほんとに、ほんとだな」
「しつこいわよ」
 臆病者。
「……わかった。じゃあ、とりあえず」
 ガウリイの顔が近付いてくる。
 わ……わかってはいるつもりだけど……やはりこれは……っ!
「ん……んんっ」
 逃げ損ねた。
 先ほどの攻撃にも似たキスとは比べものにならないような、滑らかで深いキス。
 唇を合わせるだけじゃなくて、甘噛みしてそっと舐めて、奥まで入ってくる。
 唾液の絡まる何とも言えない嫌らしい音がして、ひどく生々しいのに溶けそうなほど甘い。
 知識としては知っていても、恥ずかしくてまともに想像したことすらなかった。
 そんなキスをガウリイにされていると思っただけで、現実感がなくなってぽーっとした。
「ん……は……」
 唇を離されてもしばらく何も言えないでいるあたしに、ガウリイが少し笑った。
 よしよしと頭をなでながら、何やら男っぽい声でささやく。
「キスってのは、こーやってするんだぞ……?」
 やかましい。
 できるかこんなこと。
「……っ」
 負けたようでくやしいが、何も言えない。
 恥ずかしいし、頭が働かない。
 ガウリイの顔を見つめていることもできなくて目をそらしたあたしは、ふとそれに気が付いた。
 何というか、言葉にするのははばかられるのだが。
 要するに、何だかんだ言ってガウリイが思いっきりその気になってるのがわかってしまった。
 もちろん恥ずかしくて一瞬しか見られなかったけど、間違いない。
 どうやらガウリイ、こう見えてこっそり我慢していたようである。
 へーえ。余裕っぽい顔してるくせに。
 ほほう。
「……何だよ」
 にやにやし出したあたしに気付いて、ガウリイが不審そうな顔をする。
「ふふん。押し倒してもいーわよ、あんたにその度胸があるんならね」
 優位を取り戻した気分のあたしに、ガウリイは嫌そうな顔をする。
「そーゆーのは、言われてやるもんじゃないだろ」
「言わなきゃやんないじゃない。いつまで経っても」
「まぁ、そのうちな」
「そのうちっていつよ。ほーら、覚悟なんかできてないじゃない」
「オレはできてるって。お前さんこそ」
「あたしはできてる」
「いーや、できてるとは思えない」
「何度言わせんのよ」
 不毛な言い争いをして、手のひら一つ分の距離でにらみ合う。
 結局、膠着状態なのか。
 進まないのか、これは。
 と思った時、思い切ったようにガウリイが言った。
「……わかった」
「何が?」
「今晩、部屋で飲まないか?」
 あたしはずっこけそうになった。
「晩酌の誘いかっ! この話の流れでっ!? てゆーかあんたお腹減ってるんかいっ!?」
「……いや、今のは、ちゃんと誘っただろ……?」
 ガウリイの呟きに、ものすごく遠回しな誘いの真意を悟る。
 かっと顔が熱くなった。
 つまりそれは、飲んでその後……という……う、ううむ。
「う……ええと、その」
「返事しなくていーぞ」
 ガウリイがぽんと頭に手を置く。
「来たら、覚悟ができてるんだなって思う。来なかったら、全部忘れる」
「む……」
 何か、すごく負けた気分になった。
 それは、行けば思惑通り、行かなければ逃げたということになり、どっちにしろあたしの負けという……。
 く……くそぅ。
「あんたこそ……逃げたら、承知しないわよ」
 強気にそう言うのが精一杯だった。
 ガウリイは、少し情けなさそうな、少し嬉しそうな顔をして、頬をかいた。
「――おう」

 そんなわけで。
 あたしは夜になってしっかりお風呂を浴び、部屋で一息付いた後、一階の酒場に駆け込んでカウンターを叩いた。
「おっちゃんっ! 美味しいお酒とおつまみっ! 瓶でねっ!」

 分が悪いのはわかってるけれども。
 あたしから仕掛けた勝負。
 第二ラウンドは、あたしが勝つんだから。

END.

 おまけ・ちょっと続き

Don't touch!のすからさんとの絵板応酬を見た方から、続きをぜひと拍手ご要望いただいて思わず「よぉし!」と書いてしまいました(笑)。
経緯と絵板イラストは、先日ブログにまとめております

私が書くとすからさんちのガウリイさんとは雰囲気が違ってしまうのですが、それでも当家では1番強いガウリイさんになったのではないでしょうか!(これでも)
私が続きを書くことを快く許可してくださったすからさん、ありがとうございました!

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