「ゼフィーリア、行かなくてもよくなっちゃったわね」
「え」
ガウリイは、青い目をきょとんと見開いてあたしを見る。
「ほら、ブドウ食べに行くって話だったじゃない? でも、ブドウはたっぷり食べたし、そもそもシーズン終わっちゃうし。ゼフィーリアまではまだ一ヶ月くらいかかるわよ」
そうなのである。
ブドウを食べたいからお前の実家に行こう、なんぞという話から、あたしたちは今、街道をゼフィーリアに向かって北上していた。
現在地は、セイルーンの中央を過ぎたあたり。目指すゼフィーリア首都ゼフィール・シティまでは、まだ一ヶ月ほどの道のりを残している。
サイラーグからゼフィーリアまで、順調に行けば二ヶ月ほどの道程で、ブドウの季節には滑り込める計算だったのだが……そこはあたしたちだから。まっすぐ進めると思ったのがバカだった。
お宝につられてみたり、変な依頼受けちゃったり、レッサーデーモン一ダースとじゃれてみたり、セイルーン王宮で足止めされたり、エトセトラエトセトラ。
まあなんだかんだあって、秋も終わろうかという今、まだ半分しか来ていない状態なのである、これが。
「あー……」
ガウリイは困ったように頭をかいた。
あたしは、その表情を見逃さないようにひたりと目を据える。
正直、あたしにはこの男の考えが読めずにいる。
かれこれ三年も一緒に旅をしているし、たいがいの行動は予測できるようになったと思っていたのだが。
いきなしお前の実家に行こうとか言い出した真意がどの辺にあるのか、どうにもつかめない。
ただ単に、自称保護者として『そろそろ実家に顔くらい出せよ』というおせっかいなのかもしれないとは思う。
だけど、それにしては妙に強引で。
もしかして裏があるのか、と疑ってみたら、なんだかこいつのことが分からなくなってきた。
「でもさ、ブドウが終わったってことはワインができてるよな? ゼフィーリアはワインの産地だっていうじゃないか」
結局、ガウリイから出てきたのはそんな言葉だった。
「確かにゼフィーリアのワインは美味しいわ。だけど、何年か寝かさなきゃいけないから、今行っても飲めないわよ。ヌーヴォーには間に合わないし」
「そっかー……」
「ねえ、本っ当にブドウ食べに行くわけ?」
冒頭部分より、抜粋です。
いやもうホントにさわりだけですけど(汗)。