「リナ――!」
ガウリイが、飛ぶように階段を駆け下りてくる。
だが、勢いよく転げ落ちてしまったリナとガウリイとは、かなりの距離が開いている。
攻撃して退けるか、回避するか、リナの頭の中をいくつかの呪文がめぐる。
(――避けるには体のダメージが大きい!)
瞬時に心を決めてリナが唇に
「な、何だっ……!?」
動揺したのは、ゼヴィエアの方だった。
リナは唱えきっていない呪文を口の中で凍らせる。
ゼヴィエアの腹の口が裂けそうなほど大きく開き、苦痛のためだろうか、ゼヴィエアが大きく体を揺らしていた。
肉体が崩壊しそうにも見える不気味な光景に、リナが顔をしかめる。
――瞬間。
腹に空いた闇の穴から何か大きな塊が勢いよく飛び出して、真っ直ぐリナに衝突してきた。
「うえっ」
かなりの重量を持つ物体に押しつぶされて、リナはたまらず倒れ込む。
「お、お前は……!?」
ゼヴィエアが動揺の声を上げた。
リナは目を開け、自分を押しつぶした物体を確認してぽかんと口を開く。
「な……!?」
ゼヴィエアの腹から飛び出しリナの細い体の上に載っていたのは――人間だった。
年の頃は十を少し超したくらいだろうか。金色の髪をした小柄な少年だ。
射出の衝撃に耐えるがごとく、手足を縮めて玉のように丸まっている。
一見して普通の人間に見える。だが、この少年は明らかにゼヴィエアの腹から飛び出してきたのだった。
リナの声で我に返ったのだろうか、少年は首を振りながらゆっくりと目を開けた。澄んだ青い瞳が露わになる。
「ここは……」
戸惑ったように瞬きする少年を、リナはとっさに突き飛ばした。
「どいてっ!」
同時に自分も横に転がる。
ゼヴィエアの腕が、二人を狙って振りかぶられていたのだった。
冒頭部分より抜粋。