経験は何にも勝り 後

 その部分にそっとさわったリナは、すぐ持ち前の好奇心に動かされたらしく強張った表情を消した。おそらく痛みを与えないように気をつけているのだろう、やわらかな手つきで上から下までなぞる仕草は、技巧のかけらもないのにガウリイをぞくりとさせた。
「……へー。こんなに柔らかいもんなのねー」
「……まぁ、今はな」
 リナはとびきりの嘘つきだが、隠す必要のないことは照れや気負いなく口に出す人間でもある。興味があるというのは本当らしく、知識欲に輝いた目で敏感な場所にぺたぺたさわってくる。
 嬉しいやらもどかしいやらで、ガウリイは大変だ。
「……あ、硬くなってきた」
 無邪気に言われれば、頭を抱えるしかない。
「……そりゃ、なるって」
 リナの手つきときたら、何か新しい魔道具をさわっている時と変わらない。非常にややこしい行為をしているという自覚など皆無なのではないか。
 根元から傘になった部分まで、なででてみたり押してみたり。ガウリイの反応などおかまいしである。
「……っ」
「これって、気持ちいいの?」
 あまりに淡白な彼女に、反抗心が湧いてきた。
「……まーな。ちょっとこっち来いよ」
 こうなったら無理にでも教えてやるとなかば意地になり、片手で細い腰を引き寄せる。身体が密着するようにして、足の間に指を這わせた。
「ちょ……っ」
「女の子のここと同じ。ちょっとさわられるだけで感じるだろ?」
 つい先ほどまでの行為で、リナの秘めた部分はまだしっとりと濡れている。1度達した後なので充分敏感になった芽は、なぞっただけの動きで身体を跳ねさせた。
「……っ」
「感じてきたら硬くなるのも同じ。自分で確かめてみるか?」
「い……いいっ! 分かったわよっ!」
 意地悪をして指先でこすりあげるのに耐えかねて、リナはガウリイの腕から逃げようともがく。逃がすものかと軽く力を込めて抱き寄せ、微妙な力加減で爪を立ててみたりする。
「実際にやってみた方が早く覚えるだろ?」
「は……んっ」
 これ以上いじめると殴られるかな、というところで手を止める。
 腕の力を抜いて解放してやると、恨みがましい目でにらまれた。
「……やり返してやるわよ」
「そりゃ楽しみだ」
 甘美な復讐に燃えたリナは、再びガウリイのものに手を添えた。
 今度は意識してやわらかくなであげ、軽く指先でつまんで揺する。かなり近くなりつつもまだポイントを外した愛撫に、ガウリイはため息をついた。焦らされてしまっている。
「何よっ! 下手だっていうの!? 初心者なんだからしょうがないでしょ!」
「いや、さすがに覚えが早いよお前さん」
「ふん、当たり前でしょっ」
「でもな、そこよりこっちの方が感じる」
 全体の半ば辺りを押さえていた指を外し、傘になった部分のすぐ下に導いてやる。指を当てる位置も、幅のある方ではなく薄い方を挟むように。
「どこにさわればいーのか分かんないわよっ」
 真剣な顔で言い、リナは小さく指を揺すった。
 ガウリイは思わず顔をしかめた。今までのもどかしい愛撫とは比べものにならない。
「……痛い?」
「いや。気持ちいい」
 ごくごく真面目に返すと、リナは何も言わず顔を伏せた。嬉しそうな、恥ずかしそうな、複雑な表情に、もう教えるのなんかやめて襲ってやろうかとすら思う。
 かなりそれらしくなった愛撫だが、それでも慣れてくると強い刺激を求め始める。
 一生懸命に教えられたことをなぞるリナを見ながら、ガウリイはそっとその髪を取って口づけた。
「……なぁ。口でしてくれないか?」
 言われると、リナは弾かれたように顔を上げた。
 そこに嫌悪の色がないのを見て、ガウリイはほっと息をつく。むしろガウリイの方から求めるのを望んでいたように見えるのは、彼の希望的観測だろうか。
「そ……そうね。挑戦してみるのが大事よね」
「んな、力まんでも。今日は風呂にも入ってるし、別に汚くないぞ?」
「べっ、別にそーいうことを言ってるわけじゃっ!」
「あ……いや、でもさっき1回してるからなぁ。うーん、何ならもう1度洗ってくるか?」
「いいって言ってんのよっ。あんただって、いつも……その……あたしにする時……」
 最後まで言えずに口をつぐんでしまう。小さく頬を膨らましているのが、何ともかわいい。
 熱くなった頬に手を当てて首筋まで下ろし、ガウリイはそっとその手に力を入れた。下へとうながされて、リナは素直にかがみこむ。両手で大事に包み込まれ、先端にリナの唇を感じ、ガウリイは1度大きく息をした。
 あのリナが、彼のものに口づけてくれているのである。好奇心万歳、向学心ありがとう、彼は内心喝采した。
「……で、どーすればいいの」
「ああ……とりあえずなめてくれるか?」
「そっか、これもあんたがしてるよーにすりゃいいのよね」
 飲み込みの早いリナは、1人で納得したようにうなずく。
 滑らかな舌を感じた時には、ほとんど呻きそうになった。
 性感自体は大したことがない。初めてなのだから当たり前だが、正直下手である。年齢の分プラス容姿の分経験を重ねてきたガウリイにしてみれば、児戯にも等しい。
 だが、彼女の一途なまでの一生懸命さは慣れた女性にはないものだったし、彼女に対するガウリイの執着度といったら今までの女性に対するものをはるかに凌駕する。愛する少女が彼を感じさせようと慣れない行為をするのを見て、興奮しないわけはない。
「……あのな、舌を硬くしてみな」
「え? 硬く……?」
「そ。こーやって」
「あ……」
 上向いたリナの顎に手をかけ、唾液で濡れた唇の中に指を入れる。逆らわず口を開けるリナの舌先に人差し指を当てる。
「そのまま押し返してみろよ。硬くなるだろ?」
「……ん」
 こぼれた唾液を指でぬぐってやり、額にキスをする。
 今度はうながされるまでもなく、もう1度そこに舌を這わせた。ガウリイが指で示すところを舌先で押し、なめあげ、彼の硬度を上げる。
 ふくれていくそれは女性の目から見ればグロテスクではないのかと思うのだが、その点リナはあっけらかんとしていた。
「……なに、これ、こんな大きいものなの?」
 ガウリイは肩をすくめた。
 確かに、彼のものはどちらかというと大きめのサイズらしい。だが、異常なほど大きいわけではない。
「でもお前さん、これを入れてるんだぜ?」
「うるさいわね。そーゆーことはこっちに置いといてよ」
 赤面し、話を打ち切るためか行為に戻る。
 その小さな唇には不似合いなものを、リナは一心になめる。赤い舌が濡れた唇を出入りする。その、たまらなくそそる光景にガウリイはそろそろ平常心の限界を感じた。
 上から抱え込むように、リナの頭へ腕を回す。ささやくように、口に入れてくれよ、とねだってみると、リナは黙って受け入れてくれた。
 リナは、ガウリイに言われるままつたない行為を続ける。
 気持ちいいといえば実際気持ちいいのだが、大胆になりきれないリナの丁寧すぎる刺激は、彼の快感とそれ以上に興奮をあおった。
「リナ、リナ。いれたい」
 そう時間も経たないうちに言うと、顔を上げたリナは濡れた唇と上気した顔で、困ったような表情を作る。
「いまいち?」
「違う、これもいいけど……お前さん飲んでくれるのか?」
「な……っ」
「まだそこまでは無理だろ? それとも、やってみるか? どっちがいい?」
「エロクラゲ。いれて」
 小さな身体に腕を回し、近くまで引き寄せる。彼女の身体も興奮でうるんでいるのを確かめ、念のため軽くほぐす。1度いれた後なので充分ゆるんでいるし、彼のものも唾液で濡れている。
 ごくわずかな準備の後、向き合う形で肥大したものを彼女に収めた。
「は……入るもんね。ほんとに」
「だろ?」
「おっきくて、気持ちいい」
「……ん。あんまし保たないかもしれんぞ」
「いいわよ、来て」
 たっぷり焦らされた分だけ、激しくむさぼる。
 嬌声を上げてガウリイにしがみつくリナは、いつも以上に乱れた。普段よりずっと積極的にキスを求め、足を絡ませて自分から腰を揺する。つながった場所からみだらな音が漏れ聞こえ、さすがに軽口も叩けない。
 たいていリナの性感が高まるのを待って少し焦らし気味に進めるガウリイだが、今日ばかりはその余裕もない。やっと心おきなく感じることのできる快感に、芯から溺れた。
 彼女の中に精を放ったあと、くたりと抱きついてくる身体を抱き寄せ、その髪に顔をうずめた。 

 ガウリイが短い眠りから目を覚ますと、枕元ではリナが上体を起こして何やら考え込んでいた。
 時折天井を眺め、納得したようにうなずき、真剣に考え事をしている様子である。
「……リナ? どうかしたか?」
「ああ、起こした?」
 振り向いたリナは、いつになく気負いもなしに額へキスをくれた。
「復習してたの」
「何をだ?」
「勉強の成果よ」
 ガウリイはぽかんと口を開ける。
「ふっ、復習するのかっ!?」
「ほっとくとすぐ忘れちゃうもの」
 思わず吹き出した。
「……ほんとに勉強熱心だなーお前さん」
「あんたと一緒にしないでちょうだい。いつまでも負けてないんだから、次は覚えてなさいよ」
「楽しみにしてるよ」
 本気でそう答え、ガウリイは再び目を閉じた。
「ったく、こんなにぼーっとしてるのに、凄腕の剣士なんだからねー。あれも上手いし、あんたってほんと卑怯だわ」
 勉強熱心で努力家の彼女は、そのうち本当に上手くなるのだろう。そうやって常に興味を持ったものを追求してきたから、人の前でものを教えるなんてこともできる。
 その、常に全方位に好奇心を振りまく、輝いた瞳が好きだと思う。
「……凄いのは、お前さんだよ」
 目を閉じたまま笑い、ガウリイは少しずつ眠りに引き込まれていった。
 今でさえ翻弄されているというのに、また敵わなくなると思いながら。

 

馬鹿話・えんど(爆)

(09.07.30 言い訳)
この頃、なぜだかポップな雰囲気のアダルトものが書きたくてあがいていたのです。
それと、当時女性向けで女の子の方がしてあげるというのを見かけなくて。リナさんなら、やられっぱなしじゃないんじゃない? と思って書いたのです。
うん。言いたかったことは分かるんです。
けど、参考文献が男性向けしかなかったこともあって、やたらストレートであからさまになってしまいました。もう、恥ずかしくて焼きたい。

今回再録にあたり、あっちこっち書きなおしてます。総とっかえしたかったくらいだけど、そんな暇あるなら別のもの書こうと思いとどまりました。焼きたい→知らんぷりしたい くらいまでは改善したかと。
秘匿しようかとも思ったんですが、テーマは好きなので……はぁ(汗)。

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