背中から

「あのねぇ。いつまで落ち込んでんのよ」
「いや……べつに、落ち込んでないぞ。ただオレ……もっと強くなんなきゃなぁーって……」

 そう言って、言葉も半ばに黙ってしまうガウリイ。
 落ち込んでんじゃん。しっかり。

 ガウリイが気に病んでるのは他でもない、ちょびっと魔法の使いにくい日だったあたしが戦闘の途中で負ったケガが原因だ。
 ケガと言ってもかすり傷である。ほんとーに、この程度のケガで泣いてもいいのは6歳のガキんちょまでっていうくらいの、ささいな傷である。
 ……いや、さすがにそれは我慢強い子供限定かもしれないが。
 とりあえず、後に残るような大ケガでないことは確かだ。

 それを、いつものように治癒でさくっと治せないからとガウリイに手当てしてもらっていたのだが、最初のうちは「たまにはこんなのもいいなー」なんて言ってたガウリイくん、だんだん悲しくなってきたらしく「オレがもっとしっかりしてたら」とか「痛そうだなー」とか言って落ち込みだしたのである。

 そろそろうっとおしい。

「このくらいのケガ、あんたはしょっちゅうしてるじゃない」
「オレはいいんだ。オレは男だし、体張るしかできないんだからな。お前さんは女の子だし、痛いのも苦手だろ」
「そりゃそーだけど……」

 あたしだって、ガウリイがケガするのを見ていて楽しいとは思えない。

 そういうことに男も女もないと思う。
 同様に、落ち込んだ姿を見せられるのも、楽しいとは思えない。

 しゅんとして座り込むガウリイのでっかい背中を見ていたら、もうたまらなくなった。

「……っだぁぁぁもうっ! いい加減にしないと首絞めるわよっ!」

 言って、あたしはしおれてる大きな背中に飛びかかった。

「うげぇぇっ! も、もう絞めてるだろっ……! ごほっ!」
「やかましいっ! でかい図体していつまでも落ち込んでんじゃないっ! あたしの気分が悪いっ!」
「わかったわかった、ギブアップ! リナ!」

 ったくもう、最初からそのくらい元気出せばいーのよ。

 あたしは首に回していた腕から力を抜いて、ほんのちょっとの間、そのまま背中にもたれかかる。

「――ありがとな」
「なっ!? お礼言われるようなことしてないけどっ!?」

 やっぱりもっとがっちり締め上げてやろうかと思ったとたん、力を入れる前に腕を押さえられた。
 あわてて手を引こうとしたけど、それもさせてもらえない。

 なんとゆーか、抱きついたような格好のまま。
 固められてしまったような。

「……もうちょっと」
「……バカ」


END.

Don't touchのすからさんちにお留守番リク企画宛で投下したSS。
イラストを付けていただけました><

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